研究概要
◯研究活動の概要
生体機能を模倣して新しい機能性分子を開発するバイオミメティクス研究は,太古から進化し続けてきた生物の最適解を材料開発に活用しようという挑戦的な分野である。
本研究室では,超分子化学的な手法を用いて結晶状態での生体機能の発現を目指して研究を行っている。これにより,結晶としての性質と生体機能とが結合した新たな機能材料を
生みだすことができる。さらに,開発した材料をデバイス化することで,化学的な視点から新しい分子デバイス開発を進めている。具体的な研究内容を下記に記す。
◯動的イオン場を利用した新規機能性分子材料の開発
単結晶内部に動的イオン空間を人為的に構築することにより,新規機能性材料の構築を目指した。例えば,イオンが包接可能な大環状分子を一次元に配列させることによってイオン伝導が
可能な単結晶材料の合成が可能となる。この様に作成した材料を用いて,その電気的,磁気的評価や熱的効果を評価する。次いで,得られた物性値を基に固体電池などのデバイスへの
応用を計り,新たな分子エレクトロニクスデバイスの構築を目指した。
◯新規スピンギャップ系の構築と化学ドーピング
現在,低次元スピンギャップ化合物の物理的・化学的研究が盛んに行われている。中でも,スピンギャップ化合物の一種であるスピンラダー物質は一次元と二次元の中間に位置する材料であり,
その基底状態に興味がもたれている。加えて,この系は高温超伝導体の母体と類似した基底状態を有することから,キャリアドーピングによる超伝導相の出現が理論的に指摘されている。
そこで,本研究室では分子磁性体を基盤とした低次元スピンラダー物質の作成と本系へのキャリアドープを実現し,新種の分子性スピンラダー超伝導体の構築を目指した。
◯単分子による誘電機構の創出及び単分子メモリの開発
外部電場の印加により制御可能な双極子を有する材料は誘電体として知られており,その中でも自発分極を示す強誘電体は,不揮発性メモリや圧電体など応用性の高さから
広く研究が展開されている。従来,強誘電性は結晶構造に由来した物性である為,微細化によりその特性を消失し,単分子による特性発現は不可能とされてきた。
本研究室では,強誘電体のイオン移動機構を単分子内に集約することで,世界で初めて,恰も強誘電体の様に振舞う分子,単分子誘電体の存在について報告している。
現在では,単分子誘電体の機構の解明を始め,新規単分子誘電体の開発を進めている。加えて,単分子誘電体を実装したメモリデバイスの開発を目指している。
Grants